阪南大学経営学部教授 桜田照雄
はじめに:この問題が私たちに問いかけるもの
学校法人森友学園への国有地売却を巡る一連の出来事は、現代日本の政治や行政が抱える課題を考える上で、重要な問いを投げかけています。特に、財務省という国の中心的な官庁で「公文書の改竄・隠蔽」という、通常では考えられない事態がなぜ起きてしまったのか。その背景には、一部の高級官僚の個人的問題だけでは説明できない、構造的な要因があったのではないかという視点が重要になります。検察庁に任意提出された関連文書の開示が進むなか、改めてこの構造問題を考えます。
本稿では、この問題が長期政権下で強まった「官邸主導」の政治体制、とりわけ高級官僚の人事を官邸が一元的に管理する「内閣人事局」の仕組みと深く関わっているのではないか、という仮説に基づいて議論を進めます。
まず、問題の発端となった国有地の不透明な取引に、首相夫人という立場がどのように関わっていたのかを振り返ります。次に、当時の安倍首相による国会答弁が、官僚組織にどのような影響を与え、「忖度」と呼ばれる空気を生み出し、組織的な隠蔽工作へと繋がっていったのかを分析します。そして、その隠蔽工・・・
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