内閣法制局の審査と消費者法の停滞

弁護士(大阪) 薬袋真司

1 「できない国」になってしまう!

 2014年の消費者契約法(実体法部分)の見直しに関する諮問から11年が経過したが、つけ込み型勧誘に関する一般規定などは、今なお十分な法改正が実現していない。

 海外では、多くの国々が、民法・契約法あるいは消費者法で、つけ込み型勧誘から表意者を救済する制度を持っている1。ところが、日本は、11年を費やしても、それができていない。このままでは、日本は「できない国」になってしまうのではないか。

2 できない「原因」

 その「原因」はいろいろと考えられるが、法案の原案に対する内閣法制局のいわゆる「予備審査」(以下、「審査」という2)が大きく影響しているように思われてならない。

 内閣法制局の審査は、一般に保守的であるとされ、特に、新たな政策展開を目指す法律に消極的になる面があるとの指摘もある3。具体的な審査のやり取りの内容は分からないものの、つけ込み型勧誘に関する一般規定を阻んでいる理由はいくつか考えられる4

 第1は、規定の明確性・具体性の要求である。だが、現行法上、規範的要件は広く認められており5、具体的・限定的な規定しか許されないという法制上の制・・・

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