中央大学法務研究科教授 宮下修一
1 はじめに
2025年7月に、それまで約1年半にわたって議論が続けられてきた「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」の報告書が公表された。報告書では、現在の社会状況をふまえると従前の消費者法制度では必要な対応ができなくなっているとして、既存の枠組みにとらわれず、抜本的かつ網羅的に消費者法制度の「パラダイムシフト」を進める必要があることが強調されている(1頁〔以下、頁数のみを示すときには、報告書のものとする〕)。
報告書において、今後は、従来の消費者法が前提としてきた事業者と消費者の「格差是正」に加えて、「消費者ならば誰しもが多様な脆弱性を有するという認識を基礎に置き、他者との適切な関係性の中で、自らの価値観に基づく『自分自身の選択』であると納得できるような『自律』的な決定」の保障という観点からアプローチすることが重要であるとの指摘がなされている点は(29頁)、特に注目に値する。
報告書で、上記の状況における実効性の高い規律のあり方として提示されているのが、法律等のハードロー的手法や自主規制等のソフトロー的手法等の規制手法の「ベストミックス」の方向・・・
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