パラダイムシフト専門調査会報告書を周辺事項から読む

一橋大学名誉教授 弁護士(東京) 松本恒雄

1 はじめに

 消費者委員会の「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会 報告書」が、その前身である消費者庁「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会」における審議開始から3年を経て、本年7月に公表された。

 とはいえ、報告書は、具体的な法改正の提案を含むものではなく、その何歩も手前の一般的考え方を提示するに止まっている。たとえば、規律の在り方について、「様々な『ベストミックス』による規律の実効性確保」(30頁)が強調されているが、このような組み合わせがベストミックスだから導入すべきだという提案を伴わないと、コメントのしようがない。したがって、本稿では、報告書の周辺事項について、気になる点をいくつか指摘するに止める。

2 先代パラダイムシフト

 消費者法の仕組みを抜本的に改革しようという意味では、2001年の消費者契約法施行後、消費者庁発足前の2003年5月に、現在の消費者委員会の前身と言ってもよい国民生活審議会消費者政策部会がまとめた「21世紀型の消費者政策の在り方について」1を振り返ることが重要である2。そこでは、「パラダイムシフト・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。