消費者法制度のパラダイムシフトについての消費者委員会答申を踏まえた今後の具体的な制度設計に向けて

消費者庁消費者制度課長 古川 剛

 「消費者法制度のパラダイムシフト」については、去る7月に消費者委員会から、「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会報告書」(以下「報告書」という)の内容を踏まえ、必要な取組を進めることが適当である旨の答申をいただいた(詳細は本書12ページ参照)。今後、消費者庁では、報告書に「消費者契約法を中心に、既存の枠組みに捉われることなく、消費者法制度を抜本的に再編・拡充」と記述されていることを踏まえつつ、実効性の高い消費者法制度を整備すべく更なる具体的な検討を行っていくこととなるが、この検討に当たっての留意点に関し私見を紹介したい。

1 「脆弱な消費者」ではなく「消費者の脆弱性」

 報告書の前文において、第1のアプローチとして「消費者ならば誰しもが多様な脆弱性を有するという認識に基づく包括的な視野に立ち、消費者取引を規律する規範を確立する必要がある」と記述されているとおり、「消費者ならば誰しもが多様な脆弱性を有する」ものである。

 まず、報告書では「脆弱な消費者」ではなく「消費者の脆弱性」に着目していることに留意したい。報告書では、高齢、若年、障害等のある集団に共・・・

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