神奈川大学名誉教授 石川正美
1 裁判の攻撃的利用と防御的利用
消費者被害の救済における司法の役割に関する古典的論考において、小島武司教授は、「消費者が現実に被害を受けまたはそうした危険を予測するときに、裁判手続を攻撃的に利用するには、どのような手続的手段が用意されているかを検討することは、企業活動の民事裁判を通じてのコントロールを推進するために、きわめて重要である。しかし、消費者が防御的地位にたったときに、その正当な防御を行うのに、どのような手続的手段が存在するのかを検討することも、ある種の企業による裁判の積極的利用の動きがみられる今日、同様に看過できない課題であるといわなければならない」と述べている(同「消費者保護と司法制度」遠藤浩ほか監修『現代契約法大系』第4巻(1985年)382頁)。
この論考は、消費者金融等を含む消費者信用における新規信用供与額の激増に伴い、信販関係事件や督促事件の新受件数等が激増していた時代に書かれたものであるが、その頃から消費者が防御的地位に立たされる裁判が激増したことは周知のとおりである。
2 不当提訴による損害賠償に関する判例
訴訟提起が違法行為となる場合につ・・・
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