弁護士(東京) 宇都宮健児
1 突然の戒厳令宣言
2024年12月3日午後10時半頃、韓国の尹錫悦大統領は、突然、政党活動の禁止や報道機関の活動を制限する非常戒厳(戒厳令)を宣言した。韓国で戒厳令が出されるのは1987年の民主化以降では初めてで45年ぶりのことである。
尹大統領は「国会が犯罪者集団の巣窟となり、国家の司法行政システムを麻痺させ、自由民主主義体制の転覆を企てている」と批判し、今回の戒厳令の目的を「北朝鮮に従う勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守る」ことにあるとした。
そして、戒厳令の宣言に伴い、議会や政党など一切の政治活動の禁止、すべての報道と出版の統制、集会行為の禁止などの措置がとられた。
2 戒厳令の解除~市民が「人間の盾」となって戒厳軍と対峙
戒厳令が宣言された当日の12月3日深夜約4千人の市民が国会議事堂周辺に駆け付け、国会の周囲を取り囲み「人間の盾」となって戒厳軍や警察と対峙した。
45年前の戒厳令は、1979年朴正煕大統領が暗殺された直後に出され、1980年に戒厳軍が民主化を求める光州の市民や学生を弾圧した光州事件につながった。光州事件では240人以上の死者、行方不・・・
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