一般社団法人日本消費生活問題研究所 主任研究員 土庫澄子
1 事案
1990年11月21日、デンマークのスケイビー病院でVeedfald氏に腎臓移植手術を行うため、ドナー(Veedfald氏の兄弟)から腎臓が摘出された。移植用に作られた灌流溶液で腎臓を洗浄し、移植が準備されたが、溶液には洗浄の過程で腎動脈が詰まる欠陥があり、移植ができなくなった。溶液はオーフス地方病院の調剤局のラボで製造されたものだった。デンマークのオーフス郡は、二つの病院の所有者であり管理者である(自治体名、病院名はいずれも当時)。
2 主な訴訟手続き
Veedfald氏は関係法令に基づいてオーフス郡に損害賠償を請求したが、オーフス郡は本件溶液を流通させておらず、二つの病院は公的資金で賄われ、溶液は経済的目的で製造されたものではないとして責任を否定した。Veedfald氏はデンマークの西部高等裁判所に提訴し、1997年9月29日に訴えがしりぞけられ、デンマーク最高裁判所に上告した。
デンマーク最高裁判所は訴訟手続きを中止し、欧州連合司法裁判所(CJEU)にEUの製造物責任指令85/374/EEC(以下、現指令)7条(a)、同(・・・
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