消費者法における行為規範と法的効果(2)
─対象分野と法的効果、努力義務・体制整備義務─

弁護士(大阪) 薬袋真司

 前稿(本誌139号21頁以下)に続き、行為規範と法的効果に関する整理・検討を続ける。

4 対象分野と法的効果

 国によって必ずしも一様ではないが、対象とする消費者取引の分野により、選択される法的効果に一定の傾向がみられる。以下、主要な三つの分野における外国の立法例の傾向と日本の特徴を簡単に指摘していく。

(1)取引方法の公正化

 不公正な取引方法の規制である。契約締結過程における虚偽表示等の欺瞞的な行為が代表的なものである。これに限らず、威圧等の攻撃的行為や判断力不足等へのつけ込み行為、さらには、履行・解除等に関する契約締結後の行為をも対象とする国が多い1。多くは、行政ルールによる規律を基礎とするが、ヨーロッパでは、これに民事効を加える例が増えつつある2。つけ込み行為については、消費者契約に限定しない形で、民法・契約法で規律する国が少なくない3

 日本では、景品表示法が表示・景品に関する行政ルールを定め、消費者契約法が勧誘における欺瞞的行為や攻撃的行為・つけ込み行為に関する民事ルールを定める。民事ルールの導入は非常に先駆的である反面、攻撃的行為・つけ込み行為や契約締結後の行為・・・

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