納骨壇使用契約の法的性質および解約に伴って生じる「平均的な損害」について(1)

九州産業大学地域共創学部准教授 岡田希世子

Ⅰ 納骨堂・墓地をめぐる現状

 少子高齢化や核家族化など家族の在り方が変化する中で、取り上げられる問題の一つが「お墓」の問題である。お墓に対する人々の考え方が変化しているのに対し、お墓には「家」意識が色濃く残り、供養の慣行や宗教との関係も相まって、社会の変化に対応できない場面が生じている。

 元来、墓地に関する権利関係は、伝統的には寺院と檀信徒(檀家)との関係の一内容であったことから、法律上の権利関係が問題となる場面ではなかった1。さらに、墓地等に関する法律は、「墓地・埋葬等に関する法律」(以下、「墓埋法」とする)ほか、民法897条に「祭祀に関する権利の承継」の規定があるのみで、墓地等に関する権利関係を解決するための法律は見当たらない。そこで、権利関係を明確にするため、昨今、事業者が「利用規約」を設け、墓地等の使用契約を締結する際に契約の一内容として扱われている。ところが、墓地等の権利関係に契約が入り込んできた結果、事業者と利用者との間で新たなトラブルが生じていると考えられる。

 ところで、墓地や納骨堂を経営しようとする場合、都道府県知事の許可が必要とされ・・・

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