旧統一教会に対する過料決定

弁護士(東京) 阿部克臣

1 本決定の意義

 本決定は、宗教法人法(以下「法」)78条の2に基づく文部科学大臣による報告聴取に対する不報告について、対象宗教法人である世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の代表者に10万円の過料を命じたものである。

 報告聴取・質問権は平成7年の宗教法人法改正で創設されたものであるが、これまで一度も行使されたことがなかった。

 今回、初めての報告聴取・質問権が旧統一教会に対して行使されたものであるところ、本決定は、同権限に関する裁判所の判断が初めてかつ詳細に示された点において重要な意義を有する(判和速報)。

2 本決定に至る経緯

 旧統一教会を巡っては、令和4年7月の安倍元首相銃撃事件を契機として、高額献金被害や政治との癒着等の様々な問題が明らかになり、宗教法人の解散を求める声が飛躍的に高まった。

 文化庁は、長年にわたり法81条1項1号の解散命令事由を刑罰法規の違反に限るとして狭く解釈し、法人や代表者が刑事責任に問われたことのない旧統一教会については要件にあたらないとの立場を取ってきたが、同年10月、岸田文雄首相は、解散命令事由に民法不法行為違反も含まれうると国会答弁した。

 それ・・・

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