国立大阪医療センター医療技術部部長 吉龍正雄
ここ20年程度の短い期間にインターネットやスマートフォンの発達により私たちの得ることのできる情報量が爆発的に増えた。その結果、判断材料は豊富になったが、一方で情報の洪水に飲み込まれて何を信頼してよいのか、日々多くの選択肢の中から信頼に足る情報を選択することも必要になってくる。
二千年前、老子は『少なければすなわち得る、多ければすなわち惑う』(老子二十二章 少即得、多即惑)ということばを残している。まるで現在のSNSを含めた情報社会を見通していたかのようである。
四年前、コロナが中国に端を発し全世界に拡がったときには、その脅威の前に世界中の医学者が協力し情報を共有し解決策をシェアした。既存の薬のなかで有効と思われるものを日本の誇るスーパーコンピュータを使って探し出したりした。巷の医者同士でもあれが効くんじゃないかとかこうしたらいいんじゃないかなどということが井戸端で議論されたりした。政府が非常事態宣言を発令すると日本人は一致協力して自粛した。それはまさに世界が統合され一つの敵に向かって団結するという稀に見る美しい光景であった。最初に流行したα武漢型・・・
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