名古屋高裁令和5年12月14日判決のポイントと弁護団の活動について

弁護士(愛知) 檀浦康仁

1 本事案のポイント=「みかじめ料」被害と消滅時効の成否

(1)本事案は、指定暴力団A組傘下の三次団体の幹部Y1から、組事務所立上げ費用、貸金、Y1の後援会費・誕生祝いの名目で、2009年10月から2016年8月までの間に合計10回にわたり、指定暴力団A組の威力を示されて、いわゆる「みかじめ料」を支払わされていた被害者Xが、Y1に対して民法第709条に基づき、指定暴力団A組の代表者Y2に対して民法第715条及び暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」という)第31条の2に基づき、連帯して、約1100万円及び遅延損害金の支払いを請求した事案である。

(2)Y1、Y2は、本件の不法行為該当性を否認する主張(請求の原因の否認)のほか、仮に、不法行為が成立する場合であっても、損害賠償請求権は、それぞれの「みかじめ料」の支払いの時点から個別に短期消滅時効が進行し、それぞれの時点から3年が経過した損害賠償請求権は時効によって消滅すると主張した(消滅時効の抗弁)。

 被害者Xの弁護団(以下、単に「弁護団」という)は、Y1、Y2の主張のすべてを争ったが、本稿では、紙・・・

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