消費者取引の環境変化を踏まえた消費者法制度のパラダイムシフト

消費者庁消費者法制総括官 黒木理恵

 令和4(2022)年通常国会における消費者契約法改正に関する議論や「既存の枠組みに捉われない抜本的かつ網羅的なルール設定の在り方」を検討すべしとする附帯決議を踏まえて、消費者を取り巻く取引環境の変化に対応するために消費者法を理念から見直し、その在り方を再編・拡充するための検討が進められている。

 第一段階の検討は令和4(2022)年夏から約1年間にわたって、「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会」(消費者庁)で進められた。その結果、昨今における消費者取引の環境変化の核心が、高齢化やデジタル化の進展が、消費者の様々な脆弱性が攻撃されやすい状況を生じさせるとともに、消費者が情報・時間・関心を提供して生活する新たな取引が拡大していること、さらに法律ではなくAI等のデジタル技術が取引の在り方の多くを規律してくことにある点が明らかにされた。そのうえでこれらの変化に対応するために、「消費者の脆弱性」「客観的価値実現」「自らの情報・時間・関心を事業者に提供する消費者」といった概念を消費者法に取り込んで規律していくべきことや、様々な法律に技術も加えた種々・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。