弁護士(東京) 荒井哲朗
第1 はじめに
今回は、本誌136号から139号、先物取引裁判例集87巻に掲載されている裁判例の中から、先物取引等証拠金取引・詐欺的金融商品(まがい)取引被害について被害救済手続実務上参照価値があると思われるものについて紹介することとする。本文において言及していない裁判例にも様々な主張立証の工夫が見られ、参考となるものが多数あるので、データベースを併せて参照されたい。
第2 取引所証拠金取引(商品先物取引・くりっく365・くりっく株365)
1 東京高判令和4年9月15日〔3〕は、法令が両建勧誘を禁止している趣旨について、「顧客の相場予想が当たっても当たらなくても、取引業者は取引ごとに手数料収入を得ることができるという取引の利益構造や、顧客にとっての取引の危険性に照らして取引業者が顧客の利益を軽視して手数料収入を得ようとすることを防止する趣旨であると解される」と指摘したうえで、「この趣旨からしても、信義則に基づき、契約上の取引が開始された後においても、両建の仕組み、リスク等を十分に説明すべき義務を負う」と判示している(取引開始後の両建に関する説明義務)。そして、各取引は・・・
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