能登震災と志賀原発

弁護士(滋賀) 元裁判官 井戸謙一

1 はじめに

 2024年能登半島地震(M7.6、以下「本件地震」)では、能登半島のほぼ全域で震度6以上、一部では震度7の揺れを記録し、各所に津波が襲来した。志賀町にあるk-net富来観測点では2828ガル1という激しい揺れを記録した2。その結果、死者241人、負傷者1429人、住宅被害7万6824軒という甚大な被害が発生した(3月1日、石川県発表)。

2 志賀原発が受けた影響

 志賀町の北部は震度7の揺れに襲われたが、志賀原発のある中部以南は、震度は6弱程度に止まった。これが第一の幸運である。それでも、志賀原発の揺れは一部の周期で基準地震動を上回った。外部電源の一部喪失、変圧器からの大量の油漏れ等のトラブルが発生したが、大事には至らなかったとのことである。震度7の揺れに襲われていたらどうなっていたか。想像するのも恐ろしい。珠洲市から志賀町まで約85キロにわたって海岸線が隆起したが、志賀原発周辺は大きな隆起を免れた。これが第二の幸運である。志賀原発は、長期にわたって稼働していなかったこともあり、かろうじて重大事故を免れた。

3 活断層の把握の困難さ

 活断層の存在を正・・・

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