フランス2021年担保法改正と日本の保証法

日本大学法科大学院教授 慶應義塾大学名誉教授 平野裕之

1 はじめに

 筆者が2024年1月に慶應義塾大学出版会より出版した『保証・人的担保の論点と解釈』では、2021年フランス担保法改正による保証法改正を取り上げた。この改正で注目されるのは、個人保証人保護規定の導入である。これまで消費法典に規定がされていた個人保証人保護規定に必要な変更を加えて、これを民法典に移した。また、判例による個人保証人保護を明文化した。日本法と比較しつつ、日本法の課題を改めて検討してみたい。

2 2021年フランス担保方改正

 フランス2021年担保法改正で注目されるのは以下の点である。①個人保証人については、契約時のその資産や収入からして負担することが可能であった金額に、その責任が制限される(バランス原則)。②また、主債務者に対して、その経済的能力からして過大な融資をする場合、債権者(金融機関)に、保証人にそのことを説明し警告をして保証の合意を受けることを義務付け、これが怠られた場合には、保証人が受ける損害の限度で、債権者は保証人に対する権利を失うもとされている。これは、消費法典の規定を導入したものではなく、債権者の個・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。