弁護士(神奈川) 青木敦子
第1 動愛法改正後も残る動物を取りまく環境の厳しさの原因
動愛法が厳罰化されても、動物虐待が刑事事件化されるハードルや行政の不十分な指導といった運用上の問題、畜産動物・実験動物・野生動物に対する動物福祉の脱漏といった問題が残る。
これは「動物の殺傷、虐待、遺棄は軽微な犯罪である」という社会全体の暗黙の共通認識によるものにほかならない。
このような暗黙の共通認識が生じたのは、基本法である民法において、動物が単なる「物」と規定されているからである。
第2 民法・刑法改正についての提案
1 民法・刑法における動物の位置付け
(1)動物を単なる「物(動産)」として扱う現行民法
民法86条1項は「物(有体物)」の定義として不動産、2項で不動産以外を動産として規定しており、動物は「動産」として扱われる。
(2)民法の「物」概念と連動する刑法の財産犯規定
一方刑法は、窃盗罪の隣に不動産の占有を侵害する不動産侵奪罪、動産を毀損することを処罰する器物損壊罪の隣に不動産の境界を毀損することを処罰する境界毀損罪といった、不動産に関する特別の規定が設置されていることからも明らかなように、刑法においても・・・
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