日本女子大学教授 細川幸一
1 民法における動物
動物法研究の第一人者である一橋大学青木人志教授は、「わが法学界においては、そもそも『動物』という視覚で関連法令を括り、一個のカテゴリーを作ること自体が一般的ではない。『動物法』というタイトルを冠した法学の著作はほとんど存在しないし、『動物法』という言葉は独立した法分野の名称としてはまだ市民権を得ていない」とする1。また、青木氏は、日本では私法領域において動物をほかの物と別個に扱う特別規定はほとんどなく、動物法の独自の特徴は私法よりもむしろ公法の領域に強く表れているとしている2。
日本の民法においては、動物は有体物であり、動産である。野生動物は無主物とされる。いずれにしても、動物は権利の客体として「物」にすぎない。しかしながら、欧州では近年、民法上、動物は単なる物ではない存在として認められ始めている。
ドイツでは1990年の民法改正によって90条「本法において、物とは有体物のみいう」との規定の後に90条aが新設され、「動物は物ではない。動物は特別の法律によって保護される。動物については別段の定めがない限り、物に関する規定を準用する」と規定している・・・
この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。