欠陥住宅紛争の基礎知識(64)
─建築基準法の構造規定─

弁護士(東京) 河合敏男

1 はじめに

 建築基準法における構造安全(構造耐力)関係の規定は、極めて難解である。特に建築基準法施行令第3章第8節以下「構造計算」の規定は、構造力学上の専門用語と数式がたくさん記載され、われわれ法律家には理解困難である。専門訴訟は色々あるが、法律の条文自体を読み解くのに専門家の助力を必要とする法律は珍しい。それ故、法律家にとっては法適用の誤りを犯しやすい分野といえるのであって、条文理解のための細心の注意と努力が求められる。

 ここでは、建築基準法の構造関係規定の基本的考え方、仕組み等についてのみ、簡単に解説したい。

 なお、建物の安全性という場合、建物の構造安全性(地震や台風に対して安全に建っているという安全性)だけをいうのではない。国交省編集の「図解建築法規」(新日本法規)によれば、建物の安全性は、①構造耐力上の安全性、②防火性・耐火性、③耐久性・耐候性、④使用上の安全性・避難上の安全性、⑤良好な環境衛生条件の確保の五つがあるとされている。本稿ではこの内、主に構造耐力上の安全性をとりあげる。

2 構造設計の原則

(1)建築基準法において、建物の構造安全性(構造耐力)を定め・・・

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