慶應義塾大学教授 鹿野菜穂子
消費者法の分野では、社会の変化とそれに伴って生起する消費者問題への対応が常に求められる。
日本では、今世紀に入って、消費者契約法をはじめとするさまざまな消費者民事ルールが拡充されるとともに、悪質な事業者に対処するための公法的な規制の強化が図られ、さらに、いわゆる消費者団体訴訟制度が新設されるなど、消費者の利益保護のための法整備(実体法ルールの拡充、手続法の整備等)が進められてきた。2004年には、消費者基本法(旧消費者保護基本法)が改正され、2009年に消費者庁が設置された後は、消費者庁を中心として消費者政策が推進されてきた。
しかしなお、消費者法には、対症療法的な形で定められたルールも多く、従来からの問題事象にも十分に対処しきれているとはいえない。個別的な対処による不整合もみられる。近年は、デジタル化やAI技術の発展によって、消費者の利便性が増大するとともに、消費生活における新たなリスクや課題も生じており、日本でも一定の方策は講じられたが、その対応は未だ途上にある。また、ルールが存在しても、その実効性(エンフォースメント)という観点からの課題が残っている場面も・・・
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