弁護士(兵庫) 加藤昌利
近時の保険法分野における裁判例を紹介する。
〔1〕判決は、保険法25条1項に基づき、損害賠償請求権を取得した保険会社による、不法行為者(少年)の親権者に対する監督義務違反を理由とする損害賠償請求について、監督義務違反を否定し、保険会社の請求を棄却した事案である。
〔2〕判決は、運送保険契約に基づく保険金請求について、保険会社による故意免責や現金の輸送方法が貨物を安全に輸送するのに適していなかったことによる免責等の主張を排斥し、保険金請求を認容した事案である。
〔1〕釧路地裁令和4年3月1日判決
児童養護施設に入所していた少年(17歳)が、養護施設の指導員に反感を抱き施設に放火をした。施設に火災保険金を支払った保険会社(原告)が、少年及び親権者に対し、保険法25条1項に基づき、建物所有者の被告らに対する損害賠償請求権を代位取得したとして、約4000万円の請求をした事案である。
未成年者が責任能力を有する場合でも、その監督義務者に監督義務違反がある場合には、監督義務者は民法709条に基づく損害賠償責任を負うとされている(最高裁昭和49年3月22日判決参照)。このため、保険会社・・・
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