弁護士(東京) 井橋 毅
はじめに
茨城県取手市福祉事務所長が生活保護利用者のXに対する仕送りが実際に行われたかどうかや仕送りに関する合意の有無等を確認することなくXに対して仕送り分の保護費減額処分をしたことを理由に、Xが同市に対して保護費不足分、慰謝料等の支払いを求めて提起した国家賠償請求訴訟において、同市の謝罪、解決金10万円の支払い、関係法令等の遵守を内容とする勝訴的和解が成立したため、本稿では、これについて報告する(本誌139頁に判和速報。なお、本件は、本誌No.130〔2022年1月〕・39頁以下でも途中経過を報告した)。
第1 本事案の概要
1 提訴までの経過
Xは、2017年初頭から、取手市にて、生活保護を受給して生活し始めた。同年8月頃、取手市福祉事務所長は、これまでXに仕送りをしたことがなかったXの養父母に対して扶養照会を実施したところ、養父から開始時期を指定せずに月1万円の仕送りに応じる旨の回答書が提出されたため、同所長は、同年9月、仕送りの実施前に、Xへの月1万円の仕送りを収入認定し、同年10月以降のXの保護費を1万円減額する内容の保護費変更決定(以下「本件処分」という)を・・・
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