世帯員の収入未申告を理由とした指導指示違反による生活保護廃止処分を取り消した判決

弁護士(山口) 斎藤隆弘

第1 事案の概要

 本件は、生活保護を受給していた原告が、世帯員(未成年)の収入を申告しなかったため、処分行政庁が生活保護法(以下「法」という)27条1項に基づき収入申告するよう指導指示を行ったものの、原告が再び世帯員の収入を申告しなかったため、処分行政庁が指導指示違反を理由に法62条3項に基づき生活保護廃止の処分(以下「本件処分」という)をしたところ、裁量権の逸脱又は濫用があったとして、本件処分が取り消された事案である(本誌140頁に判和速報)。

第2 本件処分に至る経緯

1 原告は、前夫と離婚した後、三人の子(長男・長女・二男)の親権者となったが、前夫からの仕送りが途絶えたため、平成12年10月に生活保護の受給を開始した。原告は、前夫のDVによって鬱病等を発症し、また平成21年頃には乳癌にも罹患したため、定期的な通院を余儀なくされ、長年に亘って無職の状態が続いていた。

2 平成26年3月、長男の過去5年分の収入が無申告であることが発覚し、平成27年3月、被告は長男の収入につき費用徴収決定を行い(法78条1項)、今後は収入を申告するよう文書による指導指示が行った(法27条1・・・

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