弁護士(東京) 佐々木大介
1 はじめに
特定の宗教の信者となった高齢者が、当該宗教団体に対して、多額の財産を寄付してしまい、数年後にマインドコントロールが解けて被害に気が付く消費者被害があります。
このような事案で、違法性の立証もさることながら、被害救済の障壁となるが、高齢の被害者が宗教団体との間で、何らかの合意書を作成させられているケースです。類型としては、(1)ごく一部の返金を受ける代わりに残額の返金請求を放棄する旨の条項がある低額和解事案、(2)民事訴訟を起こさない旨の条項がある不起訴合意事案、(3)全財産を教団に寄付することを内容とする公正証書遺言を作成させられている事案等があります。いずれも、処分書証を重視する民事訴訟実務上、被害救済に取り組む弁護士にとっては、大きなハードルとなります。
しかし、以下に述べるように、これらのケースであっても、被害救済の可能性はあります。
2 各事案における対応
(1)低額和解事案
世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下「旧統一教会」といいます)の信者らが、夫と一人息子に先立たれた原告に対し、夫や息子が地獄で苦しんでいるなどと、ことさらに不安感・恐怖心を煽・・・
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