神戸大学名誉教授 尼川大作
それはミツバチの異変から始まった
憎しみをもってゴキブリをスリッパで叩いたとかハチや蚊を殺虫スプレーで殺したというような経験は誰にでもあるだろう。昆虫の大部分は人類の敵のように思われることもある。だが、ミツバチなどは人類の友といってよい働きもする。たとえば世界の農作物の約3分の1が、受粉を媒介するミツバチによって支えられている。ところが1990年代のころから、世界中でミツバチの群れの大量消滅がいわれてきた。その主因の一つに、田畑に散布される殺虫剤のネオニコチノイド系(略してネオニコ)農薬の害があげられている。
もしも昆虫がいなくなると作物受粉を欠くことから食料難が起こり、また自然生態系の破壊に進む。EU(欧州連合)や韓国、米国、カナダなどではネオニコ農薬の使用禁止や規制を進めるようになった。日本国内ではこのことに関心が低く、むしろ農林水産省などによる規制緩和が目立っていた。
米粒の等級基準が足かせに
日本国内の多くの稲田では、カメムシが米粒を吸って黒点の付いた斑点米(着色粒)ができる。それに対しネオニコ農薬がカメムシ駆除に使われる。わが家の近くの稲田でも毎年8月ころ、・・・
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