みどりの食料システム戦略とフードテック

市民バイオテクノロジー情報室代表 天笠啓祐

食料生産のイノベーション

 農水省が「みどりの食料システム戦略」を打ち出しました。戦略の全体像が昨年5月に正式にまとまり、今年4月22日には、その推進のための法律も可決成立しました。化学農薬の削減や、2050年までに有機農業の割合を25%にまで増やすなど、一見、農水省の姿勢が変わったのではないかと疑われるほど、意欲的な取組みに見えます。しかし、最大の目的は、サブタイトルの「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」が示すように、イノベーションが政策の柱なのです。

 イノベーションとは、よく技術革新と翻訳されますが、ここでは安倍政権以来、力を入れて進めてきた、「ハイテク化戦略」といったイメージになります。よくみると、農業の現場にハイテクを導入するとともに、食料生産の主力を大企業に移行させ、バイオテクノロジーを用いた新品種の開発、AIを用いた生産システムの構築などの技術開発が、その柱になっています。そして、その生産を軸にした流通・消費まで含めた、すべてのところで自動化・高効率化を図る、という全体像が浮かび上がってきます。

 その農業や食・・・

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