弁護士(東京) 中野和子
消費者庁が行政措置を行った場合、速やかに被害回復を図ることが望ましい。
しかし、現実には、特定適格消費者団体が、直ちに被害回復訴訟を提起することが困難である。その例として、WILLの事件を挙げる。
WILL事件とは、消費者庁が、2015(平成27)年10月1日設立のWILL株式会社に対して、2018(平成30)年12月21日、特定商取引法違反の連鎖販売業者に対する取引等停止命令(15か月)及び当該業者の代表取締役等に対する業務禁止命令(15か月)を出した件である。WILL㈱は、「willfonライセンスパック」というカード型USBメモリを販売しこれを購入した消費者は「ウイルフォン賃貸事業」に3年間賃貸することで賃料を得られるほか、会員を勧誘した場合には紹介料を支払うという連鎖販売取引を行っていた。しかし、2018(平成30)年8月6日現在、賃借数が53万0560個に対し、賃貸台数が9350台しかなく、購入した消費者は誰もUSBメモリを受け取ったことがないというものであり、賃貸台数に比べレンタル実績が著しく少ないためいわゆる「空リース」であって、早晩賃料の支払いが滞る・・・
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