生活保護における扶養照会と自動車保有問題

生活保護問題対策全国会議事務局次長 社会福祉士 田川英信

権利になっていない生活保護

 人々の生活が大変になった際に、最後に頼りとなるのが生活保護制度です。ところが、コロナ禍で貧困が拡大しているにもかかわらず、生活保護の利用者はほとんど伸びていません。その原因のひとつが、生活保護バッシングが続いたことで、利用することが恥ずかしい、利用したくないという忌避感が強いことです。加えて、表題の扶養照会、原則として自動車の保有を認めない運用も、生活保護の利用につながらない要因となっています。

扶養照会が親族間の断絶を招くことも

 生活保護法第4条2項は、扶養が履行されると生活保護に「優先」する、と規定しています。つまり仕送りがあればその分だけ生活保護の支給額を減らすことになるのです。

 そこで生活保護申請があると、扶養義務者に仕送りが可能かどうかを確認する扶養照会を福祉事務所は実施します。この扶養照会により、親族に生活保護利用が知れ、「一族の恥さらし」と利用者が非難を受け、親族間の断絶を生むことさえあります。そのため、生活保護申請を諦める方も少なくありません。

 そもそも日本は扶養義務が異常に広い国です。配偶者間、・・・

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