オンライン申立ての義務化及び本人サポート問題

弁護士(宮崎) 小林孝志

1 初めに

 民事裁判のIT化に関する民訴法の改正作業が進んでいるところである。本稿執筆段階では、改正案が閣議決定されところであるが、そのうちの重要な論点であるオンライン申立て等(答弁書提出も含まれるので「等」を加えている)の義務化に関する部分は、大きな異論もなく、ほぼ改正案のとおりに、今期の通常国会にて可決成立する見通しである。本稿では、この義務化の問題点と、その裏腹の関係にも立つと言える本人サポートの問題点について説明する。

2 オンライン申立ての義務化

(1)訴訟代理人の義務化が法制化

 ITを利用した裁判をすべて義務化すれば、民事裁判のIT化が広く実現できるが、他方で、IT利用が困難な者の裁判を受ける権利を制限するおそれが出てくる。

 当初、すべての国民に対して、IT利用しての裁判を義務化する案(いわゆる「甲案」)も検討されていたが、紆余曲折あり、オンライン申立て等については、簡裁の許可代理人以外の訴訟代理人が就任している場合等(国や地方の指定代理人なども含まれる)に限定して義務化するという、いわゆる「乙案」が採用された。弁護士であってもITに不慣れな者もいるし、そもそ・・・

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