最判平成15年7月18日と中村調査官解説の乖離
─意思充当と当然充当についての学説─

弁護士(神奈川) 茆原洋子

1 最二小判平成15年7月18日と最二小決同年9月12日─後発債務への充当判断

 最二小判平成15年7月18日(本誌56号80頁)、最一小判9月11日(本誌57号25頁)、最三小判9月16日(本誌57号27頁)の日栄に対する最高裁判決は、民法489条を引用することにより、「他の債務」への法定充当(当然充当)を認めた。判決には事案の説明としての基本契約や借主の意思に触れているが、それは同判決の「みなし利息」の認定方法と同様、事案の説明を先行させたものに過ぎず、「要件」として限定を加えたものではない。

 他方で最二小決平成15年9月12日(本誌74号65頁・同71頁)は、弁済時には他の債務が存在せず、後発債務が存在する事案であった。後発債務への充当を是認した原審(札幌高裁判決・本誌74号66頁及び東京高裁判決・本誌54号17頁)を、最二小決は是認した(本誌74号65頁・71頁)。

 「弁済は制限超過の無効な部分には充当されず、弁済と有効な債務があれば、期限前(債務発生前を含む)の債務にも当然に充当される(後発債務の場合は後発債務発生時に充当される)」

 この命題が、平成15年上記・・・

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