第8章 欠陥商品

弁護士(大阪) 菅 聡一郎

 本年度は、平成24年10月に発生した火災がベランダに設置された家庭用ルームエアコン室外機の欠陥によるものかが争われた事件について、その高裁判決となった東京高判令和2年2月27日〔1〕を紹介する。

 同判決は、製造物責任法3条に基づく損害賠償請求における主張立証責任の枠組みを示した上で、事実上の推定を活用した認定判断により、火災の発火源を当該室外機と認定し、火災は当該室外機の欠陥により生じたものであると推認できるとして、一審判決と同様に、製造業者に対し、製造物責任法3条の損害賠償責任を認め、Xらの控訴審における拡張請求の一部も認容(増額変更)したものである。

1 事案の概要

 一審原告Xら6名は、うち4名の自宅兼教会である鉄骨造2階建建物(本件建物)の2階ベランダに設置されていたY製造にかかる家庭用ルームエアコンの室外機(本件室外機)がその欠陥に起因して発火し、本件建物に延焼して2階部分の大半が焼損し(本件火災)、本件建物内の動産も焼損ないし水損したと主張して、Yに対し、製造物責任法第3条に基づき、財産的損害及び精神的損害にかかる賠償金の請求を行った。Yは、同室外機は本件・・・

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