不公正取引の包括的なルールを求めて
─消費者法のユニバーサルデザイン化─

一橋大学名誉教授 松本恒雄

1 消費者庁設置の際の議論

 消費者庁設置に向けて議論を重ねていた2008年4月14日の第5回消費者行政推進会議において、筆者は、「消費者関係法の体系と問題点及び新組織の所管について」の意見を述べた1

 そこでは、従来の取引面での規制行政の問題点として、「業種・業態別の事業者行政の一環として行われており、横割りの一般規制が弱いことから、どの法律によっても規制されないすきま商法が現れたり、逆に重複したり、機能的には同じ種類の取引であるにもかかわらず事業者に課される義務や消費者保護の水準が異なったりしている」こと、また、規制行政の手法における問題点として、「一般規制が弱く、主務官庁による規制についても振興部門と規制部門が分離していないこと、及び経済的制裁が弱いこと」を指摘した。そして、消費者庁の設置に伴う消費者行政改革の方向性として、「取引規制に関しては、すべての種類の取引に対して適用しうる一般法を制定し(たとえば、不公正取引慣行に関するEU指令が参考になる)、新組織にその執行権限を与えるべきではないか」、また、民事ルールに関して、「消費者利益を擁護するための民事ルール・・・

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