優生保護法訴訟違憲判決─除斥期間適用に正義はあるか─

弁護士(仙台) 新里宏二

1 はじめに

 1948年、「不良な子孫の出生防止」という法の目的を定め、障害者を「不良」と決めつけ、不妊手術を強制した旧優生保護法が成立した。優生思想を法制度化したと言える。明らかな憲法違反の法律が48年間存続し続け、1996年、「障害者差別にあたる」として優生条項を廃止し、母体保護法に改正された。国は改正後も「当時、旧優生保護法は合法で、謝罪も補償もしない」と言い続けてきた。改正までの間に、約2万5000人へ不妊手術が強制された。国策によるあらがうことのできない深刻かつ不可逆的な人の尊厳に対する被害であった。法改正時には被害者の98%が手術から20年を経過し、苦難・苦労を重ねて訴えに至った被害者に待ち受けていたのは、「除斥期間の壁」。こんな理不尽が許されるのか。

 今回の被害が、旧優生保護法、同法による優生政策の推進及び優生手術という人の尊厳に対す重大、不可逆的被害と捉えられる以上、国は被害回復義務を負い、その義務違反が継続していると捉えることもできよう。

2 訴えの提起と三つの違憲判決

 2018年1月30日、不妊手術被害者が、国に対して国家賠償法による損害賠償を求める・・・

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