京都大学大学院法学研究科准教授 カライスコス アントニオス
1 はじめに
EU消費者法は、日本における立法やこれに関する議論に際して比較法的材料として様々な形で参照されてきた1。EU消費者法に関する最近の重要な展開としては、「EU消費者保護準則の実効性確保及び現代化に関する指令(EU)2019/2161」(本稿では「現代化指令」という)2の採択を挙げることができる。現代化指令は、既存の四つの指令(不公正契約条項指令93/13/EEC、価格表示指令98/6/EC、不公正取引方法指令2005/29/ECおよび消費者権利指令2011/83/EU)を改正するものである。現代化指令によるEU消費者法の改正は、社会およびこれにおける取引が複雑化する中、消費者法をどのように現代化し、どのようにその実効性を確保することができるのかについて示唆に富むものである。そのため、本稿では、同指令による改正の概要を紹介することとしたい。なお、現代化指令による諸指令の改正を受けて、加盟国はその国内法を適宜修正することを求められるが、そのような国内法化がどのように行われるのかが今後大いに注目に値する。
2 現代化指令制定の
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