消費者契約法の改正の課題と新しい消費者法制の検討

弁護士(京都) 野々山 宏

1 はじめに

 消費者法制の在り方を大きく変えていこうとする検討が始まっている。2023年11月7日に内閣総理大臣が消費者委員会に対して、「消費者の脆弱性への対策を基軸とし、」「消費者法制度のパラダイムシフトについて検討すること」を諮問した。

 検討する具体的な内容は、以下の3点である。

① 消費者が関わる取引を幅広く規律する消費者取引全体の法制度の在り方。

② ハードロー的手法とソフトロー的手法、民事・行政・刑事法規定など種々の手法をコーディディネートした実効性の高い規律の在り方。

③ デジタル化による技術の進展が消費者の関わる取引環境に与える影響についての基本的な考え方。

 この諮問を受けて、消費者委員会では、「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」(以下「パラダイムシフト専門調査会」と略称する)を設置して、2023年12月27日から検討が始まった。

 「パラダイムシフト」とあるように、これまでの消費者法制をもう一度見直し、新たな在り方を模索していく試みである。この検討がどのように進行して法制度につながっていくかは、今後の消費者法制の在り方において極めて重要である。・・・

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