第9章 欠陥住宅

弁護士(愛知) 石川真司

 令和5年度を中心とした欠陥住宅事件等の裁判例を紹介する。

1 令和5年10月25日 福岡地裁判決〔1〕

 本件は、原告が、その居住する自宅の隣地に太陽光発電設備を設置し、管理していた被告に対し、平成29年7月5日に発生した九州北部豪雨の際に、土砂及び雨水が自宅敷地内に流入して自宅等が半壊したのは、被告が設置した土地境界付近のブロック塀の設置・保存に瑕疵があったことによりこれが倒壊し、太陽光発電設備内の土砂及び雨水の流入が生じたことによるものであると主張して、工作物責任(民法717条1項)に基づき、自宅の改修費等の損害賠償を求めた事案である。

 判決は、太陽光発電設備は建築基準関係規定の適用除外となっており、本件ブロック塀の設計・施工について、建築基準関係規定の直接の適用はないとしつつ、国交省作成の宅地防災マニュアルや日本建築学会の壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)の記載を引用し、これら本件ブロック塀の竣工当時に存在したブロック塀の設計・施工基準に関する知見に照らすと、「〈1〉土木・建築に関する既存の基準書(壁式構造関係設計規準集・同解説等)の基準に適合するも・・・

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