第6章 保険

弁護士(兵庫) 加藤昌利

 近時の保険法分野における裁判例を紹介する。

 〔1〕判決は、日常事故賠償責任補償特約に基づく保険金請求について、約款所定の「日常生活に起因する偶然な事故」に該当するとし、免責事由(職務遂行性の要件)にも該当しないとして、保険金請求を認容した事案である。

 〔2〕判決は、会社が従業員を被保険者として加入した損害保険(傷害総合保険)について、会社が受領した保険金は、従業員に支払われるべきものと判断した事案である。

〔1〕東京高裁令和4年2月15日判決

 Xは、Y(保険会社)との間で、日常事故賠償責任補償特約付きの自動車保険契約を締結していた。Xは、約款所定の本件事故が発生したとして、保険金請求を行ったが、Yはこれを拒否した。

 本件事故は、Xが、神社の氏子会の活動として、前日の台風で垂れ下がった神社境内の樹木の大枝をチェーンソーで切断した際、大枝が折れて落下し、真下にいた人物に衝突し、同人が死亡するに至ったというものである。そして、これによりXは、損害賠償責任を負担するとの損害を被ったため、保険金請求を行ったものである。

 本件の主たる争点は、①本件事故は、約款所定の「日常生活に起因する・・・

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