関東大震災朝鮮人虐殺を認めない日本政府とその背景にあるもの

専修大学教授 田中正敬

はじめに

 関東大震災百年を迎えた2023年、朝鮮人、中国人、日本人虐殺・傷害事件がメディアで取り上げられ、国会でも質疑が行われた。日本政府は、一貫して朝鮮人虐殺が起こったことすら認定していない。それはなぜだろうか。

関東大震災時の朝鮮人虐殺・傷害事件

 9月1日の地震発生当日午後3時には早くも朝鮮人が放火したという流言が起こった。政府は2日に戒厳令を公布し流言を事実として全国に伝え、住民に自警団を組織させた。

 こうして自警団や軍隊、警察により虐殺事件が引き起こされた。事件は2日から4日にかけて関東地方一円に拡大した。犠牲者数は数千人とも言われる。

朝鮮人虐殺の事実を認めない日本政府

 2023年、国会で本格的に関東大震災時の朝鮮人、中国人虐殺についての質疑が行われた。これを取り上げたのは、杉尾秀哉、石垣のりこ立憲民主党参院議員、福島みずほ社民党議員らである。議員らは公文書に残された証拠を提示し、政府が朝鮮人虐殺を行った事実を認定するよう政府に迫った。

 しかし、公文書を提示したにもかかわらず、政府の答弁は「調査した限りでは、政府内にその事実関係を確認することのできる記録が見当たらない・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。