ヘイトスピーチ問題について

弁護士(神奈川) 神原 元

1 ヘイトスピーチ解消法の意義

 ヘイトスピーチ規制の議論は、2006年に結成された「在日特権許さない市民の会」(在特会)が結成されたことで大きく進んだ。在特会は2009年に京都朝鮮学校襲撃事件を起こし、2012年12月に第2次安倍政権が発足すると、翌2013年1月から東京新大久保や大阪鶴橋を中心に大規模なヘイトデモを繰り返すようになった。

 同年2月、ヘイトデモに反対する所謂カウンター運動が始まると、同年3月からメディアがこれを社会問題として取り上げ始めた。2014年には人種差別撤廃委員会から対策を求める勧告が出された。2015年5月には野党議員から「人種差別撤廃施策推進法案」が提出され、2016年3月には被害者の参考人陳述があった。

 これを受け、2016年5月24日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が成立した(6月3日施行)。

 同法の成立により、ヘイトスピーチに対する国民の理解は大きく進んだ。それでも、ヘイトスピーチはなぜ許されないのか、改めて整理しておく意義はあろう。

2 ヘイトスピーチの害悪

 まず、第一に、ヘイトスピーチは、・・・

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