神戸大学名誉教授 室崎益輝
能登震災と住家減災
元日に発生した能登半島地震では、約12万棟もの住家が損壊した。その損壊により多くの命が奪われ、同時に厳しい生活苦がもたらされた。住宅が再建できず路頭に迷った人も少なくない。この住家損壊とそれに起因する深刻な被害を見る時、災害対応の根幹に住家の減災を据えなければならないことに、気付かされる。そこでここでは、能登半島地震の住家被害に学んで、住家の減災対策の必要性と方向性を明らかにし、次の巨大災害に備える一助としたい。
1 能登震災での住家被害
まず、住家減災の必要性を確認するために、能登震災での住家被害の実態とそれがもたらした影響について、触れておきたい。
被災地全体でみると、全壊が約9000棟、半壊が2万棟の住家の被害がもたらされている。人口の少ない地域だったこともあり、阪神・淡路大震災の1/10の全半壊棟数で済んでいる。とはいえ、珠洲や輪島などの激甚被災地では、棟数当たりの全半壊率が8割を超えるところが少なくなく、面積当たりの損壊の密度では阪神・淡路大震災を遥かに凌ぐ。
(1)住家被害と人的犠牲
震災の犠牲は、直接死と関連死に分けられる。直接死230名・・・
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