被災者を救えない災害法制五つの課題と能登半島地震

日本弁護士連合会災害復興支援委員会副委員長 弁護士(静岡) 永野 海

 わが国には、災害救助法(以下「救助法」という)、被災者生活再建支援法を中心に、被災者に支援制度を届ける様々な法制度が存在する。しかし、被災地ではこうした災害法制が十分に被災者を救助できていない。能登半島地震でも同様である。以下、問題点や課題を五つに分けて示したい。

 問題の一つめは、救助法の適用が十分になされていないことである。自治体への救助法適用は、原則、人口比で決められた住家被害件数を満たすかで決まる(1号適用などと呼ばれる)。同じ災害で同じ被害を受けても、救助法の適用がなかった自治体に居住する者には支援がないという著しい不均衡が生ずる。この不均衡を回避するためには、被害件数に関わらず多数の被害が生じるおそれがある場合にも救助法を適用できる、いわゆる4号適用が重要となるが、4号適用の活用には一定の知見や迅速な判断力が不可欠であり、これらを有する自治体は多くない。そのため4号適用は十分に活用されず、結果、救助法の適用も限られる。内閣府(防災担当)は昨年4号適用の参考指針を自治体向けに通知しており、各自治体には十分な検討と・・・

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