なぜサプリ事故を防止できなかったのか
─制度に潜む安全軽視とリスク管理の分断─

食の安全・監視市民委員会共同代表 佐野真理子

リスク管理の信頼性が問われる2024年

 「紅麹(べにこうじ)」を原料とした小林製薬製造のサプリメントを食べた消費者が重大な腎臓疾患を患い、今年に入り5人が死亡、200人以上が入院、1200人以上が医療機関を受診という重大事故が発生した。

 この集団被害事故については、小林製薬の製造上・品質管理上の安全確保策のずさんさが指摘されるとともに、問題商品が機能性表示食品だったことから、制度上の課題が一挙に社会問題化した。消費者庁は急きょ専門家で構成する「機能性表示食品を巡る検討会」を設置し、5月末をめどに制度の見直しを検討しているが、私たち消費者・市民団体が望むような対策が講じられるのか、ほとんど期待はできない。

 検討会での大部分の意見は制度をどう維持するかという観点からの弥縫策(びほうさく)であり、制度の廃止を含む抜本的対策とはほど遠いためだ。

 今回の深刻な大量事故の発生ではっきりしたことは、一義的な事故の責任は小林製薬にあるが、制度の欠陥性を直視せず、是正もせず、むしろ、そのような問題ある制度の運用を積極的に推進してきた行政にも、大きな責任があるという点だ・・・

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