特商法の書面交付義務の電子化と政省令の活用と課題

弁護士(埼玉) 池本誠司

特商法・預託法の書面の電子化と政省令による制限

 特商法及び預託法の書面交付義務を消費者の同意を得て電磁的方法により提供できるとする法改正(特商法4条3項等)が、規制改革推進会議の要請により、消費者庁の検討会での議論が全くないままに2021年6月可決された。

 不意打ち勧誘や利益誘引取引などによる消費者被害を防止・救済するため、契約内容とクーリング・オフ制度を明記した書面を交付して消費者が冷静に考え直す機会を与えるという書面交付義務の消費者保護機能が、デジタル化の政策によって否定されようとする暴挙である。多数の消費者団体・弁護士会・相談員団体等がこれに強く反対した。

 これを踏まえて参議院特別委員会の附帯決議(2021年6月4日)は、政省令改正の審議は、書面交付義務が持つ消費者保護機能が確保されるよう、検討会を設けて慎重な要件設定を行うべきことを要請した。これを受けて、消費者庁は、契約書面等の電子化に関する検討会を設置し、1年3月の審議を経て提言をとりまとめ、これに沿った政省令が2023年6月1日に施行された1

 政省令において書面の電子化の承諾手続や提供手続を厳格に定めたこ・・・

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