生活保護基準引下げ処分取消し等請求事件での名古屋高裁逆転勝訴判決

弁護士(愛知) 森 弘典

1 事案の概要と争点

(1)事案の概要と経過

ア 概要

 本件は、2013年8月、2014年4月、2015年4月と3回に分けて行われた「生活扶助基準の見直し」を理由とする保護変更決定処分(生活保護基準引下げ)に対して、①引下げ処分の取消しと②国家賠償を求めた訴訟である。

 この引下げは、平均6.5%、最大10%の生活扶助費の引下げで、96%という幅広い世帯に影響を及ぼすとともに、総額670億円に及ぶ現在の生活保護制度ができて以来最大の引下げである。

 当初、全国29か所の地方裁判所で、1000名を超える生活保護利用者が引下げ処分の違法性を訴え、訴訟を提起した。

イ 全国弁護団の力を結集した「たたかい」

 訴訟の進行において、全国弁護団の力を愛知に結集することとなり、第1審段階で53名、控訴審段階で60名の弁護士が原告(控訴人)代理人として名を連ねることとなった。

ウ 訴訟の進行

 愛知では、2014年7月31日、2016年4月21日と二次に亘って、合わせて21名の原告が、国、名古屋市、刈谷市、豊橋市、高浜市を被告として、訴訟を提起した。

 第1審で、2020年6月25日、名古屋地裁は、原告らの・・・

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