生活の基盤、人生の基盤の住居を奪う裁判所

弁護士(大阪) 植田勝博

1 大阪地裁2023年10月27日判決(裁判官長谷川利明)は、借家人の居住の権利を認めなかった。事件は、借家人は生まれたときから86歳まで居住をし、戦前、戦後、借家人は補修を繰り返してきた。昭和43年ころには、建物の増改築、改装をした。この補修、増改築、改装の費用は当時の額で200~300万円余を使い、現在の価値に置き換えれば約1000万円余にもなる。その後も、阪神大震災で屋根の一部が2階に落ち、屋根をカラーベストに葺き替え、2階をフローリングにするなどの補修や改装に約200万円を要した。そのすべてを借家人が負担してきた。

 他方、貸主は、存命中に自己の相続人らにとって望ましい形で資産を早期に整理し、将来の相続に備えるため、本件土地全体を利用して、建築会社の提案にかかる賃貸物件を建築することを具体的に計画している。借家人が多額の金額を掛けて補修、改装、増改築をしてきた建物について、古い建物だから倒壊する危険がある、との2点を主張した。

2 判決は、40万円の立退料を支払うことを条件に建物明渡請求を命じた。しかも、仮執行宣言を付して、判決の確定を待たずに直ちに明渡しの執行が・・・

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