日本の民主主義運動強化のために(36)
─権力者犯罪を暴く─

弁護士(大阪) 木村達也

1 はじめに

 2023年7月5日の朝日新聞の夕刊に次のような記事が載った。

 『裁判長「大サービス」代案示すが』と題し、『黒川氏定年延長の文書開示訴訟巡り』『国側「必要ない」→当時の次官尋問へ』とある。

 この記事は、2020年、東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を延長した閣議決定を巡り、神戸学院大学の上脇博之教授が2020年から2021年に行った開示請求に対し、法務省がほとんどの文章を「作成していない」などの理由で不開示とした。このため、上脇教授が国に関連文書の開示を求めて提訴した訴訟であった。

 朝日新聞社の松浦祥子記者は、この法廷を傍聴し、このやりとりを上記のように書いて報道したものである。

 検察官の定年は検察庁法で「63歳」と定めている。しかし、政府は黒川氏の定年を目前に控えた2020年1月、検察官に適用しないとされてきた国家公務員法を「法解釈を変更した」と説明し、定年延長を決めた。これは安倍政権と親しかった黒川弘務検事長を安倍政権が検事総長に恣意的に任用するため定年延長をしようと画策したものと言われている。

 本件訴訟は、この権力者の恣意的な違法行為を明らかにして断罪し・・・

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