滞納処分対策の実例

弁護士(仙台) 佐藤靖祥

第1 はじめに

 長期にわたる不況、不安定雇用、少子高齢化などから多重債務問題が生まれてきた。近時では、多重債務問題に匹敵する社会問題として、主に地方自治体による滞納処分の問題が顕在化してきた。すなわち、住民の生活が安定していないことから税収の落ち込んできている地方自治体の中には、「住民みんなが苦しい生活の中納税をしているのに、税金を滞納している者は、税負担の公平性に反するので許されない」とのスタンスで、積極的に滞納処分による差押を行う地方自治体が現れてきたのである。自治体の中には、児童手当、年金、給料などの(一部)差押禁止債権が銀行預金口座に入金されるのを待って、預金債権として全額を差し押さえたり、こともあろうか、ヤミ金から借入をしてでも納税をすることを求めたりするといった、強引な滞納処分を行う自治体も出現するなど、住民の生存権が脅かされる事態に発展しているのが現状である。

 かかる事態に対応するべく、平成29年4月、角谷啓一税理士を代表に迎え、「滞納処分対策全国会議」(以下、本稿においては「全国会議」という)を結成し、行き過ぎた滞納処分に歯止めをかける活動を開始した・・・

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