継続的契約をめぐるドイツ消費者保護立法の動向

愛知学院大学法学部准教授 永岩慧子

1 はじめに

 一定の期間、定期的に商品を購入したり、サービスを利用する継続的契約は、新聞の定期購読など消費者の生活において従来から行われてきた取引である。近年では、定額で商品やサービスの提供を受ける、いわゆるサブスクリプション契約が、ソフトウェアや動画・音楽配信といったデジタルコンテンツを対象とするものにとどまらず、幅広い分野に拡大している。さらに、これらの多くは、インターネットを介した契約締結が可能となっている。インターネット取引の拡大は、消費者の利便性を高めるものである一方、継続的な契約を容易に締結できることによって生じるトラブルも問題となる1。日本では、2022年6月1日、詐欺的な定期購入商法の規制を強化する特定商取引法の改正が施行されるなど、通信販売における継続的な取引をめぐる問題への対応が進められつつある2

 本稿では、近時、ドイツで成立した継続的契約に関する消費者保護立法として、「公正な消費者契約のための法律」による改正の概要を紹介することにしたい。

2 ドイツにおける「公正な消費者契約のための法律」の概要

 2021年8月10日、ドイツ民法典(以下・・・

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