消費者団体訴訟制度
不当条項差止請求制度の拡張可能性

大阪大学大学院高等司法研究科教授 武田直大

1 はじめに

 我が国の消費者団体訴訟制度は、①消費者契約法・特定商取引法・景品表示法・食品表示法に規定された一連の不当行為に対する差止請求制度と、②消費者裁判手続特例法に基づく集団的被害回復手続制度からなる。本稿では、前者の差止請求制度について、その中でも制度創設時から存在する不当条項差止請求を取り上げ、その拡張可能性を検討する。具体的には、①既存契約における不当条項に対する団体訴訟および②契約締結後に変更された条項に対する団体訴訟の可能性を論じる。現行制度は、消費者契約の締結時に焦点を合わせた差止請求制度しか設けていない。この現状は「消費者の被害の発生又は拡大を防止する」(消費者契約法1条)という制度趣旨に照らして十分といえるか、というのが、本稿の問題意識である。

2 既存契約における不当条項に対する団体訴訟

 現行法は、「消費者契約を締結するに際し、不特定かつ多数の消費者との間で第8条から第10条までに規定する消費者契約の条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれ」(消費者契約法12条3項および4項)があることを、不・・・

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